2011年2月28日月曜日

就職内定率97.3%のシンガポールの南洋理工大学(NTU)に行ってみた

700以上の大学がある日本とは対照的に、選択と集中の明確なシンガポールには大学が3つしかありません。

それはシンガポール国立大学(NUS)、南洋理工大学(NTU)、そしてシンガポール経営大学(SMU)の3つです。

シンガポール国立大学に留学中のme,paulさんのブログによると、それぞれ東大、東工大、一橋といった位置づけらしいです。

◆ キャンパス訪問日 : 2011.2.23(水)

◆ 南洋理工大学(Nanyang Technological University)の立地とアクセス

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MRT(地下鉄)のBoon Lay MRT Stationから、179または199番のバスで15分ほどでした。

Boon Lay MRT Stationの駅
Boon Lay MRT Stationの前では、NTUの大学生をターゲットにしていると思われる
acer、hp、lenovoなどの展示があった



◆ キャンパス風景


シンガポール国立大学と同じく、キャンパスが大きいため移動は専用バスを使う。



緑の多い、広々としたキャンパス。



大学の広報誌によると、97.3%の学生が卒業前に一つ以上の企業から内定を得たとのこと。
就職先はCredit Suisse等の金融系やDSO(政府の防衛関連の研究開発)などがあり、それぞれの人事担当は
・プロフェッショナルかつインターパーソナルスキルが高い
・チームプレーヤーかつ自主的

といったNTU生の特質を評価していた。
「メディア・イノベーション・インスティテュート」という施設が建設中だった。




NTUのキャンパス内で行なわれていたキャリア・フェア

キャリアフェアに参加していたのは、政府系、金融系、技術メーカー系など。
出展リストは、政府系(Public Service Pavilion)と民間企業に大きく分けられていて、

政府系が民間よりも先に来ていた(おそらく人気が高いのだろう)
政府系ではDSO(防衛研究開発)などや、民間企業では日本人にも馴染みの深いDysonなどが出展していた。

キャリアフェアが行なわれていたのは、バイオロジカル・サイエンス学部の前の広場


キャリアフェアの主なスポンサー一覧
一番最初に政府系(Public Service Pavilion)の求人

民間企業の求人その1

民間企業の求人その2

民間企業の求人その3




グループワークやディスカッションの風景もよく見かけた。
教科書的な知識のしっかりとした詰め込みと、ディスカッションによる対話的な教育の両方が行なわれているのだろう。

2007年にNTUのバイオロジカル・サイエンス学部を首席で卒業し、
今はハーバード大学で博士をやっている学生のポスター。
ポスターになってるぐらいなので、大学として目指すロールモデルなんだと思われる。


工学部らしく、なにやら大きい作業スペースがあった


理工系がメインだが、人文系の施設もあった。







学食にはマクドナルドも入っていた。






学食でも勉強。前評判通り、勉強熱心な学生が多そうだった。

学食のフードコート。食のバラエティに驚いた。
日本食、韓国料理、中華料理、インド料理、タイ料理、ベジタリアン向け、西洋料理などなど。






図書館の中その1

図書館の中その2

図書館の中その3


バンド的なサークル活動もあるようだ


キャンパス内にイノベーションセンターという施設があったので覗いてみた

大学発のベンチャーか、大学との合弁企業が入居しているようだ

施設としては建設途中の部分も多く、まだあまり力が入っていない印象だった


同じキャンパス内にあるNanyang Business Schoolの正面。
フィナンシャルタイムズのGlobal MBA Rankings 2011では全世界33位だが、キャンパスはしょぼい印象を受けた。

Nanyang Business Schoolのフロア構成


NTUではマイノリティと思われる社会科学・人文系の学部の棟。

社会科学・人文系の学部の広場は、ちょっとアーティスティック。



数学と物理学のキャンパス

インド系と中華系の学生が一緒にディスカッション。
理工系の大学だから女子率は1~2割ぐらいかと思ったら、4~5割ぐらいが女子学生だった。
2009年のシンガポール政府統計によると、大学進学者の男女比は53:47のようだ。

数学・物理学キャンパスの学食風景

学食でインドネシア料理を注文。
シンガポールドルで$2.9 (188円)と破格の安さ。普通に美味しい。

実際にNTUキャンパスに行ってみて感じたことは次の4つ。

1. 理工系なのに女子学生の比率がすごい。
パッと見た感じ、4割~5割は女子な印象。中華系の女子と頭を布で覆ったムスリムの女子も目立つ。シンガポール政府のYearbook of Statistics Singapore 2010という統計によると、2009年度のNUS、NTU、SMUの全3大学で学生の男女比は53:47(男38,317,女34,393)とのこと。21世紀の自然科学の歴史は女性が切り開くのかもしれない。

2. 学食のバラエティがすごい。安くて上手い。
インド、中華、韓国、日本、インドネシア、ベトナム、西洋、ベジタリアンそれぞれの店がフードコートのように並んでる。多国籍で様々な文化・宗教の学生がいるから、このような構成になるのだろう。

3. 就職内定率がすごい。97.3% (大学の広報誌発表)。
英語での理工系の専門知識とロジカルシンキング力、多国籍なグループワークで鍛えられるダイバーシティな環境においてチームで仕事をするための資質が、外資系多国籍企業や政府系企業から引く手あまたになる要因か。特に、バイオテクノロジー関連の研究棟が新しく、力を入れている印象だった。同じくシンガポールにキャンパスのある世界トップ4のINSEAD MBAの卒業生内定率が86%(2009)だったことを考えても、断トツの就職内定率であることがわかる。もちろん理工系学部生のほうが給料が安くて、経営幹部よりも採用数が多いからだとは思うけど。

4. 大学キャンパスが大きい。緑が多くて、日陰は涼しい。
日中は33度を超える暑さでも、風通しの良い日陰は涼しく、外の机とベンチで勉強している学生たちをよく見かけた。ある統計によるとNTUには学部生が29,000人、院生が8,700人、教職員が1,900人いるそうだ。2009年の政府統計(Yearbook of Statistics Singapore, 2010)ではシンガポールの3つの大学で学生が72,710人、教員が3,958人なので、NTUに39%の学生と48%の教員がいる計算になる。マンモス・キャンパスだ。



蛇足 NTUを見学に行ってみた理由


2010年のGDP成長率が14.5%(前年比)を記録し、世界から企業・頭脳・マネーを集めているシンガポールの魅力は何なのか。そこにおける生活インフラや教育・大学システムはどうなっているのか?


シンガポール、実質GDP成長率が過去最高14・5%増 選挙控え減税、外国人労働者には増税 2011.2.21
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110221/asi11022120470003-n1.htm
実質GDP成長率を押し上げたのは、製造業で前年比29・7%増と大幅な伸びを示した。分野別ではバイオメディカル(49・8%増)、精密エンジニアリング(40・1%増)、電子製品(35・5%増)-などが牽引

そういった興味からシンガポールを訪れ、NUS,NTU,SMUの3つの大学キャンパスを訪れて、気になったことを追加で調べて書きました。

個人的なバイアスも多いでしょうし、ひょっとしたら事実誤認もあるかもしれません。

ただ、基本的なインフォメーションは英語で検索すれば何でも手に入る時代だからこそ、個人として体験して主観的に知覚し、自分の頭で考えたことに価値があると思っています。

NTUの内情をより詳しく知りたい方は、かつてNTUに留学されていたという陰陽師さんのサイトをご覧いただくのも良いかもしれません。


シンガポール国立大学・研究生活

いずれにしましても、NTUやシンガポールの教育事情について知りたいと思われた方の参考になれば幸いです。

次は、シンガポール経営大学についてご紹介します。

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